微熱のままぼんやりと、けほけほと咳をしながらベッドに入っている。去年の冬のことを思い出している。過去をなかったことにしたければ、出来るかぎりそうすればいいと思う。けれど記憶している唯一の自分から消えていくのが寂しいと思うときもある。私の悲しみは私だけのものであってほしい。秘密にしていれば自分だけのものになるのだろうか。人に話すことや、そのことを記憶したまま文章を書いたり絵を描くことで自分のものではなくなるのだろうか。ひどく寂しい。今は何も知らないふりをしてわたしのためにすり減らして生きている。ずっとずっとここにいる。